• 2018.03.19

新富町に移住&新規就農。循環する農業のみらいを担う 〜みらい畑 清水康正さん

面白そうだと思っても、やったことのないことをやるのは不安です。しかし、やらなければ何も変わりません。

宮崎県新富町には、「面白そう」を原動力に活動している方々がいらっしゃいます。

みらい畑のメンバーとして活動する、清水康正さんはその一人です。みらい畑の創業者である石川美里さんに誘われて、2018年2月から新富町で活動しています。みらい畑は、耕作放棄地の再生と高齢者の雇用を生むことを目的として、2017年11月に設立された法人です。

 

筆者「清水さんは、元々農業に興味があったんですか?」

清水さん「元々おじいちゃん子で、山に行ったりしてたから、外に出るのが好きだったんだよね。」

筆者「そうなんですね。でも、移住ってハードル高くないですか?」

清水さん「新富町とは全く関わりがなかったけど、全然迷わなかった。活動が面白そうだと思ったから、すぐ決めたよ。」

 

清水さんは食べ物への関心も高く、移住前は食品関連業で働いていました。しかし、大きな企業だったこともあり、現状を変えたくても変えられないことに物足りなさを感じていたのだとか。そんな時、石川さんから一本の電話が。みらい畑で一緒に働かないかといわれ、迷わず移住を決意したとのことです。

楽しそうに農業をする清水さん

筆者「畑は買ったんですか?」

清水さん「潜在耕作放棄地を借りてやってるよ。小さな畑が色んなところにあるんだよね。まとまってた方がやりやすくもあるけど、紹介してもらっている分、条件はいい。」

筆者「潜在耕作放棄地・・・?」

清水さん「高齢になって、これから耕せなくなるであろう土地のこと。新富町にはそういう土地があったから、みらい畑のスタート地点になったんだ。」

 

新富町はあくまでもスタート地点であり、これからは全国に活動の範囲を増やしていくそうです。人を呼び込もうとするあまり、町外に出ていくことを良しとしない自治体もあると思いますが、新富町にはそういう縛りもありません。

人生の軸は「循環」

清水さん「新しいものをつくっても、それが続かなければ意味がないと思うんだ。」

筆者「確かにそうですね。農業において、続くとは・・・?」

清水さん「食べ物を生産することで、循環する自給自足の社会がつくられるんじゃないかな。循環すれば続いていくよね。」

 

現在作っているのは、人参とレタスだそうです。その理由として、虫の害が少なく育てやすいこと、市場に出回りやすいことがあげられます。めずらしい野菜を植えても、うまく育たなかったり市場に流通させられなければ農業経営も成り立ちません。ゆくゆくはめずらしい野菜を作りたいそうですが、まずは循環の基盤づくりの段階からスタートです。

清水さんは農業の他にもチャリティーサンタという活動をしています。チャリティーを支払った家庭にサンタさんがプレゼントを持って来て、そのチャリティーは世界中の子供たちの支援金に使われるというものです。サンタさんが家に来た子供が大きくなった時、今度はサンタさんとして誰かの家に訪れるようになれば、循環する仕組みになります。

「循環」を軸として、面白そうな活動に取り組む清水さんの様子がうかがえます。

移住者に聞く!新富町の魅力とは

筆者「ずばり、新富町の魅力ってどこだと思いますか?」

清水さん「んー、まだ一か月しか経ってないからなんともいえないけど、都会過ぎず田舎過ぎずなところかな。」

 

新富町に行って驚いたのは、本当になんでもそろっているところです。スーパーもあり、飲食店もあり、更には温泉まであります。JAの直売所には、新富町のお野菜がずらり。生産者はここに出荷することができ、町内で生産から消費が完結する仕組みが整っています。

 

清水さん「後は、やっぱり人が温かいところかな。実は、大事件があってね・・・。」

筆者「大事件ですか?何があったんですか?」

清水さん「隣の人の畑に、フンをまいちゃったんだよね・・・。どこまでが自分たちの畑かわからなくて。」

筆者「ええっ、大丈夫なんですかそれ?!」

清水さん「フンといっても肥料なんだけど。謝りに行ったら、そんなに害はないからいいよって許してくれて。新富町の農家さんの温かさを感じたよ。」

筆者「おお、優しいですね。農家さん同士、横のつながりもあったりするんですか?」

清水さん「自分たちは本当に素人だから、色々教えてもらいながらやっているよ。でも、農業は職人技みたいなところもあって、教えてもらったからうまくいくとは限らない。この野菜たちも、売り物にならなくて。」

畑に放ってあった、形の悪い野菜たち

筆者「もったいないですね。何かしら救える方法はないんでしょうか。」

清水さん「こういうロスを出してしまうこと自体を減らせばいいんだよね。それがこれからの課題かな。いいもの作れば、売れるから。」

 

新富町には、新規就農者が入りこみやすい農家コミュニティがあるようです。しかし、すべてを受け入れてもらえるわけではありません。みらい畑が目指す有機農業に関しては、ある程度の農薬は必要であると反対されることもあるのだそうです。

取材中、とある農家さんにたまたまお会いした時には、「マスコミに取り上げられてちやほやされているけれど、実力が追いついていない。」とのお言葉も。厳しいお言葉ですが、新富町の農業への愛とプライドが、この言葉からにじみ出ているともいえます。

一度訪れれば、私の町

「観光客」というよりは、「仲間」として受け入れてくれるような雰囲気が、新富町内には漂っています。それは、地元住民と移住者が融合した町であることを示しているのではないでしょうか。

「一度訪れれば、私の町」

新富町はそう思える町で、清水さんのような挑戦者がたくさん集まってきています。

強い地域経済をつくることをミッションとして様々な活動を行っているこゆ財団のように、挑戦する人の背中を押してくれる存在があることも、新富町に人が集まってくる理由の一つだと思います。こゆ財団自体も挑戦を重ねており、挑戦経験者のアドバイスをもらえるのは大変心強いことでしょう。

清水さんの取り組みは、まだまだこれから。新富町でどんな花が咲くのか、楽しみです。